インタビュー

「HATCH」コミュニケーターの徳田琴絵さんにインタビュー

「富山でチャレンジの循環を生み出したい」

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、会社に通勤するスタイルではなく、リモートで仕事をする人が増えました。旅先でリフレッシュをしながら仕事もするという「ワーケーション」もライフスタイルの一つとして広がってきていますよね。

 

海も山もあって、充実したコワーキングスペースがある富山県は、ワーケーション先としてもじわじわと人気が出ています。

 

今回は、インキュベーション拠点「HATCH」のコミュニケーターの徳田琴絵さんにインタビュー。徳田さんのキャリアを振り返っていただきながら、富山県内のワーケーション事情、そして「HATCH」について聞きました。

 

 

 

徳田琴絵さん(とくだ・ことえ)さん/富山県砺波市在住。病院事務勤務を経て、現在フリーランスとしてインキュベーション拠点「HATCH」のコミュニケーターなどを務める。

 

安定志向が強かった私が「変わる」まで

 

 

私は富山生まれ富山育ちで、今も県内の砺波市というところに住んでいます。もともと富山が大好きだったわけでもないですし、“都会の暮らし”に憧れていた時期もありましたが、それでもずっと富山に住み続けているのは、居心地がいいから。これに尽きるかなと思います。

 

もともと安定志向が強く、公務員や病院事務といった仕事に就いて、両親を安心させたいと思っていたこともあり、県内の専門学校に進学。卒業後は病院事務の仕事に就きました。実際に働いてみると、コミュニケーションは楽しいけれど、毎日同じ作業の繰り返し。社会人1年目ながらどこか手持ち無沙汰さを感じていました。

 

 

同じ頃、砺波市が観光大使を募集していることを知りました。「面白そう!」と思って応募したら、運良く選んでいただいて。砺波市のことや富山県内のことを自分の言葉でPRする活動に関わるようになったんです。

私を含めて4人が観光大使に任命され、なかなかのハードスケジュールだったのですが、切磋琢磨しながら活動を1年間やり遂げました。観光大使になったことで、地域に誇りを持っている方々にたくさん出会い、自分が知らなかった地域の魅力を知ることができました。それまであまり「富山が大好き」と感じていたわけではないのですが、大使の経験を経て、すっかり「富山ファン」になりましたね。

 

医療事務の仕事は続けていましたが、転職をやんわり考え始めて。当時富山にできたばかりのコワーキングスペース「COMSYOKU」で行われていたイベントに参加しました。それは「ヒトのハタラクを知るナイト」というキャリア系のイベント。進路の参考になるかなと軽い気持ちで参加したのですが、登壇者のみならず参加者も、自分のやりたいことを仕事にしている人たちがたくさんいたんですね。富山にもこんなに働き方の選択肢があるんだということを初めて知り、とても刺激を受けました。

 

 

 

 

私も自分の好きを仕事にしたいーー。まずは出来ることからやってみようと、富山で生き生きと活動している人たちにインタビューをする企画「トヤマビト」をnoteでスタート。その企画を読んでくれていた友人から、一緒に富山を盛り上げようと、インキュベーション拠点の「HATCH」に誘ってもらいました。

 

やんわり転職を考え始めてから数年が経ってしまいましたが、7年ほど勤めた医療事務の仕事を辞めました。周囲のアドバイスや協力があって、フリーランスとして仕事を始め、今に至ります。

 

 

富山にチャレンジの循環を生み出す「HATCH」

私が今関わっている、インキュベーション拠点の「HATCH」は2020年12月にオープンしました。日本海ガス絆ホールディングスグループの株式会社日本海ラボ(富山市)が、新しいことに挑戦する若者をサポートし、コミュニティ拠点をつくりたいと始めた事業です。

 

普段はコワーキングスペースとしてご利用いただけますが、HATCHの一番の特徴はコミュニティがあること。運営メンバーは日本海ガスの内部メンバーのほか、県内で事業を立ち上げた経営者や地域の学生などが集っています。イベントやマッチングといった交流やディスカッションができる環境になっています。



 

HATCHは、富山にチャレンジの循環を生み出すことをビジョンとして掲げています。例えば「こんなことをしたい」というアイデアの卵を持っているけれど、まだ形になっていない。そんな人がHATCHで誰かと出会い、対話することで、そのアイデアをHATCH(孵化)させるーー。そんな装置になれればいいなと思うんです。実際に、もともと銀行員だった人がHATCHでの出会いをきっかけに起業した例など、一歩を踏み出す人が増えてきて。HATCHのコミュニケーターとしてとても嬉しく思っています。

 

 

県内に、ここ数年で「共創」を目指す拠点やコミュニティが増えてきました。ビジネスにチャレンジする側も、それをサポートする側も着実に層が広がっており、チャレンジしやすい土壌ができていますね。

 

富山の「推し」をみつけて!

私にできるのは書くこと、話すこと、企てること、つなぐこと。具体的には、インタビューライターとして情報を発信したり、イベントのファシリテーターとして場を温めたり、実際に富山に訪れてもらうためのツアーを企画したり、HATCHの中で人と人との出会いを創出したりしています。

 

 

病院事務で働いていた頃の私からは想像もできないような仕事をしていますが、富山こそ今の私にとって大切な居場所。会いたい人に会えて、やりたいことができる場所なんです。自然遊びもアートやクラフトも好きなので、そういったものも身近に感じられる富山が本当に大好きです。

 

 

富山県はHATCHをはじめ、ワーケーションにはもってこいだと思います。ぜひ皆さんそれぞれ、富山の「推し」を見つけていただき、継続的に富山に関わってもらえたら嬉しいです。

※取材は2023年9月上旬です。

記事の制作に関わった方をご紹介

文:五月女菜穂 (株式会社kimama)

神奈川県横浜市在住。1児の母。大学卒業後、朝日新聞社に入社。新聞記者として幅広く取材経験を積む。2016年に独立し、ウェブや紙問わず、取材・執筆・編集・撮影を行う。22年4月、合同会社アットワールドを起業し、旅好きのフリーランスが集まるコミュニティ「@world」を運営。23年5月、編集プロダクションの株式会社kimamaを創業。世界一周経験者で、渡航歴は45カ国超。